るごろの営業日誌

小倉にて

お盆の最終日は小倉へでかけた。
予定の時間より早く着いて、井筒屋でお線香を買う。
1番良いやつ…ウソ、5番目くらいに良いもの。
それからレストラン街でお蕎麦を食べて、
正面玄関に設置してあるソファに腰掛け
地下でテイクアウトした珈琲を飲みながら友人を待つ。
ここはかつての職場、本館はずいぶん古びてしまって、
外壁のタイルなんか継ぎ接ぎだらけ。

そういえばSさん、弁当売りに来てたな。
何を思ったか予告なしに突然弁当持ってきて販売、
美味しいもんだから先輩たちにも好評だったけど、
職場に持込み販売などもちろんご法度、
上司に見つかって叱られないか内心ヒヤヒヤものだった。
その後にわか弁当屋はすぐに終了したけど
変に肝のすわった人だった。

小倉の下町にあったSさんのバーは
いつも賑わっていて様々な人間が集った。
Sさんは人を楽しませる天才で、
職業も年代も越えてSさんを中心にお客同士が緩やかに繋がり
心地よく過ごすことができる店だった。
(ちなみにるごろ店主はここで一時期アルバイトをしていた)
現在は再開発で店は移転、
店のあった場所には立派なタワーマンションが建ち、
その一室の自宅でSさんが一人急逝したのが今年の6月の事だった。
享年57歳。
知らせを受けたのが入梅の会の準備で梅の木にぶら下がっている時だったし
店主もイベントの準備に追われていたので、結局お通夜も葬儀も参加できず
お参りがお盆になってしまった。

友人と二人、妹さんのお宅にうかがい、
胡蝶蘭に囲まれた遺影の前にさっき買ったお線香を供える。
遺影をみつめながら、あぁ、やっぱり死んじゃったんだなと思う。
しかし…この遺影の写真、めちゃくちゃ笑っている。
四角いフレームの中でSさんが爆笑している。

「Sさん来たよ。元気でしたか?」
—- ヒュードロドロドロ〜 —-
『あんた相変わらずバカやね〜、もう死んどるっちゃ。』
「あ、失礼。っていうか死ぬのちょっと早すぎじゃない?」
『そっちゃ!あんたも〜ビックリしたわ〜
こげん早く死ぬとか思わんけさー、びっしり予定入れとったんよ。
旅行だけは心残りやわーー』
などとあの世のSさんとの会話を妄想したりして。

妹さんの話だと、自分の死期が分かっていたかのように
ここのところずっと旅行三昧で、毎月何処かへ行っており、
3ヶ月先まで予約がしっかり入っていたという。
人生を謳歌してたんだなぁ、あの人らしい。

6月のお通夜にはなんと700人を超える人が訪れたという。
「Sさんにはお世話になりました」とみんなが口を揃えて言うので
兄ちゃん何者?って妹さんとても驚いたそう。
るごろ夫婦が出会ったのもSさんの店。
るごろの種を蒔いてくれた。
Sさんのお店は一旦閉店し、スタッフが新たにスタートさせるという。

ありがとう、さよなら、どうぞ安らかに。

9階の喫茶ビオレがまだ営業していた。 泣きそうになった。

9階の喫茶ビオレがまだ営業していた。
泣きそうになった。

2015-08-31 | Posted in るごろの営業日誌No Comments »