るごろの営業日誌
梅の木を植える
2月に入り立春を迎えたあたりから寒さが厳しくなりました。
雪が積もり、手先足先がしびれるような気温の中
表では夜に昼かまわず猫たちが発する悩ましい鳴き声が
ほんのり春の訪れを感じる今日この頃です。
2月というと私達の梅畑でもそろそろ梅の木の蕾も膨らんで
しばらくすると白く小さな花が開く頃です。
やわらかく甘い香りが梅畑中にほんのり漂って
そうなると春はもうすぐそこという晴れやかな気持ちになります。
花が散ると青葉が芽生え、やがて畑一面緑が広がる春へ。
そして暖かくなるにつれて小さな実がなり、
徐々に膨らんで収穫の夏の入りを迎えます。
住んでいる場所から車で2時間と離れているため、
たまにしか手入れしてあげられないのに
ちゃんと季節に合わせてこのめぐりを繰り返してくれます。
梅畑は気持ちが安らぐ楽園のような場所です。
昨年は剪定のし過ぎや天候で梅の不作の年でしたが
今年はうまく実ってくれるのか心配なところです。
実はそんな梅畑に昨年、売却話が持ち上がりました。
畑のある地域は温泉という売りはあるものの農業が主な産業です。
しかし担い手である若い人はどんどん町の方へ出て行ってしまいます。
過疎化がどんどん進み町の将来に深刻な影を落としているのです。
そこで梅畑のある土地一帯にとある施設を建設して就職口を作り、
なんとか人の流出を防ぎたいというのです。
大切な土地ではありますが、地域のためならと
一旦手放す覚悟を決めました。
もう梅が採れないと思うと寂しくて悲しくて、
今まで加工した梅漬けやシロップやサワーをぼんやり眺め
ため息ばかりの憂鬱な日々でした。
ところがその後、施設計画が意外な方向へ転がったり
色々あって今のところ一旦売却はお断りする事に。
あぁ、また梅を収穫できると胸を撫で下ろしましたが
事態は流動的で来年、再来年どうなるかは分からない
落ち着かない状況は変わりません。
そんな状況の中、梅が収穫できない事態を避けるために
別の場所にも梅の木を少しづつ植えて行こうと思い立ちました。
そして今年その1本目を植樹しました。
苗木から植えるのは初めての経験です。
梅が実をつけるまでは最低3年かかると言います。
グングン元気に育つ事を祈って一番陽当たりの良い場所を選びました。
直径50〜80センチ、深さ50センチの穴を掘って
苗木を植えてその回りに水を溜める溝を丸く掘ります。
種類は人気のある南高梅をまずは1本。
生きている限り色んな人間の思惑に左右されないよう、
そんな場所に増やしていこうと思っています。
去年採れたわずかな梅の実でつけた梅酒が美味しく仕上がりました。
毎晩それを飲みながら次はどこに植樹しようか考えを巡らせています。